H.O.W Stories

【愛知・岡崎】大好きなまちの公園でウエディング

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想いを寄せるまちを舞台に

東海道が通る宿場町であり、また徳川家康が生まれた岡崎城の城下町として栄えた愛知県岡崎市。中心市街地は空襲で焼けてしまったものの、かつては100軒以上続く賑やかな商店がいくつも点在していたと言われています。そんな岡崎のまちのおへそに位置する籠田公園で、2017年6月、アウトドアウエディングが行われました。

新郎新婦は、岡崎の隣まちに暮らす近藤航さんとみなみさん。三重県出身のみなみさんが岡崎のまちを知ったのは、大学生の時。NPOとNGOを盛り上げるイベント運営を通して岡崎のまちづくりをしている山田高広さん(三河家守舎)との出会いがきっかけで岡崎のイベントに参加するようになり、どんどんまちの魅力に惹き込まれたのだそう。

近年、まちの中心を流れる乙川の魅力を活かしたプロジェクトが行われるなど、民間によるまちづくりが進んでいる岡崎のまち。それまで“まちづくり”という活動すらあまり知らなかったみなみさんは、一人ひとりが思いを持って日常をより良いものにしようとしているまちがあることに驚き、「もっとこのまちと関わりたい」と感じるようになったと言います。

しかし、三重からは遠く、日常的にまちづくりに関わることは難しい。そう感じていたなかで、転機が訪れたのは8年後。航さんと婚約し、なんと岡崎の隣まちに暮らすことになったのです。同じタイミングで、リノベーションまちづくりの本質を実践的に学ぶ「リノベーションスクール@岡崎」に参加したみなみさん。岡崎にゲストハウスをつくる案に対し、思い切って事業オーナーとして運営に関わることになり、大好きなまちとの距離がここでぐっと縮まりました。

式場での挙式もすでに名古屋で決まっていたそうですが、「自らの手でウエディングをつくってみたい」「岡崎のまちにアウトドアウエディングの文化をつくりたい」という思いがあったそう。そこで、ゲストハウスから一番近い籠田公園でウエディングパーティーを開催することを思い付きます。

籠田公園には既設のステージと広場があり、芝生がまちの人たちによって整備されていることも気に入っている。ならば、と山田さんに相談したところ、計画に賛成してくれました。

「岡崎は繁華街でも住宅街でもなく、“ほどよい感じ”のまち」と、山田さんは言います。「最近は籠田公園の周りに若い人による素敵なレストランもオープンして、今後はコミュニティの中心となる公園を目指す計画もある。彼女のアウトドアウエディングを通して、公園の可能性をまちの人にも見てもらうことができたら、公園利用も高まるはず」。それぞれの生活の延長線上にある豊かさを可視化することで変化の兆しになるのでは、という思いから、みなみさんの計画をサポートすることにしたのだそう。

そうして、ウエディングの準備はみなみさんが主体となり、夫である航さんの応援とまちの内外の人たちの協力で進めることになったのです。

イベントで仲間を見つける

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(写真:参加者提供)

そして2017年4月。みなみさん主催のもと、岡崎でトークイベント『アウトドアウエディングのつくり方』を開催。すると、嬉しいことに地元で活動するプランナーさんをはじめ、貸衣装屋さんやドレスのパタンナーさん、地元の高校生まで、多様なスキルと思いを持つ方が参加してくれたのです。そこで、H.O.W柿原がこれまでの各地でのアウトドアウエディングの事例とそのHOW TOを紹介しました。そして、会の後半では、まちの人たちがやってみたいことをなどもディスカッションして盛り上がりました。

「既存のパッケージに頼らないことで、どれだけ人とまちの可能性が広がりを見せることができるのかわくわくしました。ウエディングに使いたいものや結婚式で活躍してほしい人たちがたくさんいる。たった1日のパーティーのために、関わる人はたくさんいるのだと改めて気づいた会でした」(みなみさん)

公園の利用については、市役所の公園緑地課に申請書を提出して許可をもらうことに。「音の出る演出にはくれぐれも慎重に」と伝えられたものの、実際はどこまで許容されるのかが感覚的で判断が難しい。そこで、みなみさんと航さんは山田さんに地図を描いてもらい、公園の周辺住民に理解を得るためのご挨拶に回ることに。バンド演奏の曲目が少し賑やかなロック&ポップミュージックだということ、音出しの時間帯まで細かく伝え、最後に「これからゲストハウスでもお世話になります」と丁寧なやりとりを進めました。

他にも、車輌の管理やゴミ処理、会場の現状復帰を徹底することを約束し、当日何かあった場合のために、窓口を山田さんに担当してもらいました。こうした常識や良心、挨拶という人間的な付き合いがお互いの信頼へと繋がるので、当日もスムーズに開催するために覚えておきたいポイントです。

このまちの「好き」が集まった1日

前日から設営準備を行い、迎えた当日。すっかり晴れた青空に笑顔を浮かべる地元チームとともに、朝からみんなで公園をハレの日仕様に彩ります。

ダウンロード (6)(写真:Chiaki Toyozumi)

中心に登場したのは、地元企業である岡崎製材さんの協力でできあがった「PUBLIC WEDDING KIT」。小屋は受付やドリンクカウンター、引き出物ブースとして。タイヤ付きで女性でも軽く転がして設置できるテーブルとベンチは、ゲストの食事用。ベンチはセレモニーでも活躍します。

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セレモニースペースの中心となるのガゼボは、KITの骨組みをベースに、好き好きに装飾。デザインが得意な地元の大学生と、花屋で働いていたというゲストが飛び入りで、布とお花を使って見事に仕上げてくれました。

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19477581_10208777797112359_2189142372349374038_o(写真:Chiaki Toyozumi)

昼頃になると、県内外から訪れたゲストが続々と公園に到着。乾杯の挨拶とともに、大好きなまちでのパーティーがスタートしました。

3P3A0493_original(写真:Chiaki Toyozumi)

受付で手渡されたのは、オリジナルのパンフレットとリストバンド。「今日来てくれた人たちが、もう一度まちに足を運んでくれるように」と、関わってくれたお店の情報がマップとともに紹介されています。

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会場には、公園の周りにある素敵なお店が出店。地元ママたちが働く「wagamama house」内にあるお惣菜屋さん「hokurani food」からは、地元の食材を使った見た目も可愛らしい料理が登場。

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世界8位のピザ職人・長尾晃久さんは、なんと自前のピザ窯を積んで登場してくれました。「公園で焼きたてのピザが食べられるなんてサイコー!」とゲストも大喜び。

ダウンロード (1)(写真:Chiaki Toyozumi)

手伝ってくれた地元の女子高校生たちも、実は初めてだという結婚式を楽しんでくれました。

21743212_1469727103113647_6891166052800710579_n(写真:参加者提供)

ステージでは、新郎・航さんのバンド演奏が、会場の雰囲気をさらに盛り上げます。「いつも地下のライブハウスで活動をしている彼らのバンドの演奏を、外で気持ちよく聴いてみたくて」とみなみさん。

3P3A1129_original(写真:Chiaki Toyozumi)

ガゼボを囲むように敷かれたピクニックシートには、ゲストがリラックスして自由に腰を降ろします。気づけば、ゲストとスタッフ、そしてその周りに広がるまちが新郎新婦を囲んだ状態に。

3P3A1219_original(写真:Chiaki Toyozumi)

ウエディングケーキは、地元のお菓子屋さん「SAPON」が担当。宝石のようなケーキやスコーンも大人気でした。

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(写真:左 / Chiaki Toyozumi、右 / 参加者提供)

引き出物は、地元の特産品である三河木綿の丸紡綾紬をつくる「愛美屋染物店」さんから譲り受けた端切れを手ぬぐいにしたものと、公園のすぐ側で手焼きにこだわる「一隆堂」さんのお煎餅をセレクト。どちらも、古くからこのまちの変化をずっと見守ってきた老舗です。

3P3A1129_original_豊住さん(写真:Chiaki Toyozumi)

子どもたちも元気に参加し、すっかりお腹も心も満たされたパーティーの後は、いよいよセレモニーの時間。シャボン玉がきらきらと空を舞うなか、ゲストがつくった花道をゆっくり通り、新郎新婦の新たな門出をお祝いしました。

まちの暮らしの延長に、ハレの日をつくる

大好きなまちでの結婚式。振り返ってみると、苦労したこと、大変だったこともたくさんありました。例えば、みなみさん自身はウエディングの出席経験が少なく、ましてやウエディング運営の裏方なんてまったく経験がなかったそう。また、岡崎出身ではないので、地元出身のプランナーさんや山田さんに頼ることも多く、もっと自分でやれたら、と歯がゆい思いをした部分もあったと話します。それでも、当日はお祝いに来てくれたみんなが驚くような素敵なパーティーになり、勇気を持って仲間を巻き込んで開催に踏み切ったことに満足しているそう。

行政とのやり取りを担当していた山田さんは、公園の利用申請時の手続きや書類作成に思いのほか時間がかかったと感じたと言います。特に園内でのピザ窯の設置やケータリングに関しては、これまでに事例がなく判断基準が定まっていないため、部署を横断して決めなければならないこともあったのだとか。そのため、単なるイベント実施の許可取りではなく、目的の共有(企画課、商工労政課、観光課など)、食事の提供方法(保健所)、火の扱い方(消防)などの調整を並行して行いながら、管理者である公園緑地課と協議する形で進めました。

また、食事の提供については、H.O.Wのアドバイスのもと、基本的に事前調理はそれぞれの事業者が保健所から営業許可を受けた自らの調理場でつくってもらうことに。ピザは最終加熱を現場で行い、衛生面にも配慮しました。

なかでも、ふたりが一番心配していたのが雨天の場合。運動会テントを近隣の小中学校から借りて対応する予定でしたが、設置するための人手は足りるのか、実際に雨でも楽しめるのか、開催前まで不安だったと言います。つい雨のことは考えないようにしたり、後回しにしたりしてしまいがちですが、雨天準備は早めにしておくのがオススメです。

最後に、岡崎でのアウトドアウエディングの可能性について、おふたりに聞いてみました。

ダウンロード (8)(写真:Chiaki Toyozumi)

「私は岡崎につながりがある方だと思っていましたが、ウエディングを通してさらに多くの方と出会えて、もっとこのまちが好きになりました。今後は、自分が窓口となって岡崎のアウトドアウエディングの可能性を広げていく予定です。そのためのベースがつくれたと思うので、誰かやりたい人がいた時には、私がお手伝いしたいと思います!」(みなみさん)

DSC08382(写真:参加者提供)

「公園は、オープンであるからこそ、誰もがそこで起こっている光景を見ることができます。ウエディングという幸せ感満載のコンテンツは、ウエディングの企画者とまちとの関係がより近くなることで、まちの人がエキストラとして参加しやすく、その幸せな時間や空間を一緒に過ごすことができる。まちという不特定多数の集合体が個人の幸せを祝う、その構図がとにかく素晴らしいですよね。こうしたまちのスタンスは、まちなかに新しい店がオープンしたり、イベントが行われたりする際にもあったらいい。アウトドアウエディングは、そのスタンスを実体験するのにもっともわかりやすいコンテンツだと思います」(山田さん)

3P3A1537_original(写真:Chiaki Toyozumi)

地域の空間と資源、そして人が集まり、それぞれがひと役を担ってできあがった結婚式。大好きなまちの日々の延長線上に、結婚式の光景を。まちを愛するたくさんの仲間との出会いが、まちをさらに面白くするはずです。

【結婚式開催概要】
開催時期:2017年6月17日(土)
開催時間:12:30〜15:30
開催場所:籠田公園
準備期間:3ヶ月
スタッフの人数:31名
参加人数:140名(+スタッフ30名)
ゲスト会費:8,000円(小学生3,000円)
開催に掛かった費用:170万円

●このウエディングを作った人たち●
プランニング:Wedding Lapple
プランニングアシスタント:田中美佐子
企画・運営アドバイス:H.O.W
制作マネジメント:佐藤朱莉
グラフィックデザイン:岡田侑大
フード:hokulani food、長尾晃久
ドリンク:Quiet Village
お菓子&ウエディングケーキ:SAPON
お花:Flowe Velb
引き出物:愛美屋染物店、一隆堂
バックヤード:ゲストハウス風と土
写真:Chiaki Toyozumi、参加者提供
映像:嘉向徹

●PUBLIC WEDDING KIT
企画・考案:H.O.W
屋台の企画・設計:YADOKARI 小屋部+チョウハシトオル
製作:岡崎製材

●協力
三河家守舎、ついたち意匠考案室、東山浩二、堀竜二、森田愛、H.O.W

●SPECIAL THANKS
平川優里、村瀬桃子、浅井映妃、鈴木亜加史、籠田公園周辺地域のみなさん

取材・文:原山幸恵(H.O.W)

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